自転車売り場に並ぶ子ども用ヘルメットを前にして、どれを選べばいいか迷った経験はないでしょうか。
デザインも価格もさまざまで、パッケージには見慣れないマークがいくつも印刷されています。
ヘルメットは、子どもの自転車用品のなかで唯一「命に直結する」装備品です。
それでいて、選び方を詳しく教えてくれる場所はほとんどありません。
サイズが合っていなければ事故のときに脱げてしまい、安全基準を満たしていなければそもそも衝撃を受け止めてくれません。
この記事では、安全基準マークの見分け方から、頭囲の測り方、正しいかぶり方の具体的な工夫までを解説します。
買う前に、そして買ったあとにも役立つ内容です。

目次
- ヘルメットは「努力義務」—— 子どもの命を守るため
- 安全基準マークを確認する
- サイズは頭囲で選び、必ず試着する
- 形と装備で選ぶ —— 子ども向けに見ておきたいポイント
- 正しいかぶり方 ——「まゆ毛の上・指1本」を合言葉に
- かぶるのを嫌がる子への5つの工夫
- 買い替えの目安 —— 強い衝撃を与えてしまったら交換⁉
- よくある質問
- まとめ —— 優先順位は「基準 → サイズ → デザイン」
ヘルメットは「努力義務」 — 罰則はなくても、守るのは子どもの命
まず、法律上の位置づけを整理しておきます。
2023年4月から、すべての年齢が対象になりました
改正道路交通法により、2023年4月1日から、自転車に乗るすべての人のヘルメット着用が努力義務となりました。
それ以前は13歳未満の子どもが対象でしたが、現在は大人も含めた全年齢が対象となっています。
「努力義務」なので、かぶっていなくても罰則はありません。ただし、これは「かぶらなくてもいい」という意味ではまったくありません。
自転車事故で亡くなった方の多くが、頭部への損傷を致命傷としていることが、この改正の背景にあります。
保護者には「かぶらせる努力義務」があります
あわせて知っておきたいのが、道路交通法に定められた保護者の責務です。
保護者は、児童や幼児が自転車に乗るときにヘルメットをかぶらせるよう努めなければならないとされています。
つまり、子どものヘルメットは「子どもがかぶるかどうか」だけの問題ではなく、大人が安全のために用意し、正しく着用できるようサポートすることが大切です。
子どもが嫌がる場合も、すぐに着用を諦めるのではなく、嫌がる理由を探しながら、無理なくかぶれる方法を工夫していきましょう。
安全基準マークを必ず確認する

実は、見た目はヘルメットでも、自転車用の安全基準を満たしていない商品が市場に出回っています。
実際に、消費者庁が「自転車用ヘルメット」をうたう商品に対して措置命令を出した事例もあります。
安さやデザインだけで選ぶ前に、1つの目安としてパッケージや内側のシールで安全基準マークを確認することも重要です。
SGマーク(日本)
一般財団法人 製品安全協会が定める安全基準に適合した製品に表示されるマークです。
自転車用ヘルメットでは、衝撃吸収性やあごひもの強さ、脱げにくさなど、安全性に関する基準が設けられています。
また、SGマーク付き製品の欠陥によって人身事故が発生した場合に備えた賠償制度が設けられていることも特徴です。
CE(EN1078)
CEマークは、EU(欧州連合)が定める安全・健康・環境保護などの要件に適合していることを示す表示です。自転車用ヘルメットを選ぶ際は、「EN1078」への適合が確認できるかをチェックしましょう。EN1078は、自転車やスケートボード、ローラースケートなどで使用するヘルメットを対象とした欧州規格です。
JCF(日本自転車競技連盟)
競技用として公認・推奨されているマークです。
競技での使用を前提とした基準のため、子どもの普段使いで必須というわけではありませんが、信頼できる基準のひとつです。
マークがない製品もあります
通販サイトなどでは、極端に安く、安全基準への適合が確認できない製品を見かけることがあります。
安全基準への適合が確認できない製品は、自転車用ヘルメットとして十分な安全性能を備えているか判断することが難しくなります。
ヘルメットは、価格だけではなく、安全基準を確認して選びましょう。
サイズは頭囲で選び、試着して選ぶ

安全基準を満たしていても、サイズが合っていなければ意味がありません。事故のときにずれたり脱げたりすれば、守る場所を守れないからです。
頭囲の測り方
参考として、次のようにメジャーを使って計測する方法があります。
- まゆ毛の少し上にメジャーを当てる
- そこから水平に、耳の上を通して後ろへ回す
- 後頭部のいちばん出っ張っている部分を通して一周させる
このとき、きつく締めすぎないこと。メジャーが軽く頭に沿う程度で読み取ります。
子どもがじっとしていられない場合は、寝ているあいだに測ってしまうのも手段のひとつです。
帽子と違う!頭囲の数字だけでは決められません
ここが帽子と違うところです。同じ頭囲でも、頭の形(前後に長いか、丸いか)は人によって違います。数字が合っていても、実際にかぶると前後がぶかぶかだったり、側面が当たって痛かったりする場合があります。
そのため、可能なかぎり店頭で試着してください。通販で買う場合も、サイズ交換に対応している店を選んでおくと安心です。
「大きめを買って長く使う」だけは避ける×
子ども用品では定番の考え方ですが、ヘルメットに関しては危険な選択です。
大きいヘルメットは、走行中に前後にズレが発生することがあります。ずれれば視界がふさがれ、額が露出します。
そして、転倒の衝撃で簡単に脱げてしまいます。脱げたヘルメットは、かぶっていないのと同じです。
多くの製品にはダイヤル式の調整機構が付いていて、ある程度の成長には対応できます。
しかし、それはあくまで「今かぶれるサイズ」の中での微調整の範囲内の為、ワンサイズ上を買うのとは意味が異なってきます。
試着の際に見ておきたい!3つのポイント
- 前後左右にぐらつかないか:あごひもを締めない状態で、頭を軽く振ってもずれないのが理想です。
- どこか一点が強く当たっていないか:痛みがあると、子どもはかぶるのを嫌がるようになります。
- 子ども本人が「これがいい」と思えるか:後述しますが、これは実用上とても大切な条件です。
形と装備で選ぶ —— 子ども向けに見ておきたい5点

サイズが合う製品が複数見つかったら、次は形状や装備で絞り込みます。
カタログではあまり強調されませんが、日々の使い勝手を左右するポイントがあります。
① 後頭部まで覆われているか
自転車の転倒では、前に投げ出されて額を打つケースと、後ろに倒れて後頭部を打つケースの両方があります。
後頭部が浅くカットされたデザインより、後ろまでしっかり覆う形のほうが、子どもには安心です。とくに、まだふらつきの多い練習期は後方への転倒が起こりやすくなります。
② 軽さ
小さな子どもにとって、頭の上に載る重さは想像以上の負担です。重いヘルメットは首が疲れ、それが「かぶりたくない」に直結します。
数十グラムの差でも体感は変わるので、候補が並んだら手に持って比べてみてください。
③ 通気口の数と大きさ
夏場の蒸れは、子どもがヘルメットを嫌がる最大の理由のひとつです。
通気口(ベンチレーション)が多い製品を選んでおくと、暑い時期の抵抗がぐっと減ります。
④ あごひもの留め具
金具をかみ合わせるバックル式のほか、マグネット式を採用した製品があります。マグネット式は片手で留められ、あごの皮膚を挟みにくいのが利点です。子どもが自分で着脱できるようになると、外出前のやりとりが一気に楽になります。
⑤ バイザー(つば)と反射材
バイザーは、日差しなどが目に入りにくくなるのが特徴です。
ただし、形状によっては視界に影響することもあるため、試着時に子どもの見え方を確認してください。
反射材は、夕方など周囲が暗くなってきた時間帯に、車のライトなどを反射して存在を知らせるのに役立ちます。
正しいかぶり方 ——「まゆ毛の上・指1本」を合言葉に
正しく選んでも、かぶり方が間違っていれば性能は発揮されません。次の3点を、毎回声に出して確認する習慣をつけてください。

※大きすぎるヘルメットは走行中にズレて、転倒した際に衝撃で脱げる場合があります。
「大き目のサイズを買って長く使う」というのは、ヘルメットでは大変危険です。
① 前後の向きを確認する
子ども用ヘルメットは前後の形が似ているものもあり、逆にかぶってしまうことがあります。後頭部を深く覆う側が後ろです。あごひもの分岐が耳の下にきていれば、正しい向きです。
② 位置は「まゆ毛の上、指1〜2本分」
もっとも多い間違いが、後ろにずらしてかぶることです。
おでこが出た状態は、見た目には楽そうですが、転倒時にもっとも打ちやすい額を無防備にしています。正しくは、まゆ毛の上に指1〜2本分のすきまがある位置。ヘルメットの前ふちが、視界のいちばん上に少し見える程度が目安です。
③ あごひもは「指1本入る程度」
ゆるいと脱げてしまい、きついと嫌がります。あごとひものあいだに指が1本すっと入るくらいが適切です。
締めたあとで子どもに口を大きく開けてもらい、ひもが少し引っぱられる感覚があれば、ちょうどよく締まっています。
かぶるのを嫌がる子への5つの工夫

「ヘルメットは嫌!」と言われたときが、多くの保護者がいちばん困る部分かもしれません。
① 子ども自身に選ばせる
もっとも効果があるのがこれです。色や柄を自分で選んだヘルメットは、「かぶらされるもの」ではなく「自分のもの」になります。
安全基準を満たした製品をいくつか候補として絞ったうえで、最終的な1つは本人に決めてもらってください。
② 大人も一緒にかぶる
子どもだけがかぶって、隣を歩く親がかぶっていない——この状態では、子どもは納得しません。
「みんながかぶるもの」だと示すのがいちばん早い説得です。前述のとおり、大人も努力義務の対象になっています。
③ 「暑い」「重い」を疑ってみる
嫌がる理由が、わがままではなく物理的な不快感であることは珍しくありません。
通気口が少ないヘルメットは、夏場はかなり蒸れます。重いヘルメットは、首の弱い小さな子には負担です。
買い替えを検討する前に、まず「暑い?」「重い?」「どこか痛い?」と具体的に聞いてみてください。
原因が特定できれば、解決できることも多くあります。
④ 「かぶってから外に出る」を順番として固定する
玄関を出てから「はい、ヘルメット」と渡すと、交渉の余地が生まれます。玄関でかぶる、かぶったら出るという順番を最初から固定してしまうと、そもそも議論になりません。靴を履くのと同じ、外出の手順のひとつにしてしまうことです。
⑤ 叱って解決しようとしない
ヘルメットをめぐる攻防が毎回けんかになると、自転車に乗ること自体が嫌な記憶と結びついてしまいます。それは本末転倒です。強く叱るより、上の4つを地道に試すほうが結果的に近道になります。
買い替えの目安 —— 一度でも強い衝撃を受けたら交換
見た目が無事でも、内部は壊れているかも
ヘルメットは、内部の発泡素材がつぶれることで衝撃を吸収する仕組みです。つまり、一度大きな衝撃を受けたヘルメットは、その役目をすでに果たし終えています。
外側に目立つ傷がなくても、内部の素材は復元しません。転倒して頭を打った、高い場所から落としたという場合は、見た目にかかわらず交換してください。もったいなく感じるかもしれませんが、次の事故では守ってくれない可能性があります。
経年劣化にも注意
衝撃を受けていなくても、ヘルメットの素材は紫外線や汗、温度変化などの影響を受け、少しずつ劣化していきます。
交換時期の目安はメーカーや製品によって異なるため、取扱説明書やメーカーの案内を確認しましょう。製品によっては、使用開始から3年程度を交換の目安としているものもあります。
また、夏場の締め切った車内など、高温になる場所での保管は素材の劣化につながる可能性があるため避けましょう。
子どもの頭は成長するため、サイズの確認も大切です。調整機構を最大まで広げてもきつさや痛みを感じるようになったら、サイズアップを検討するタイミングです。
よくある質問
Q. 帽子の上からかぶってもいいですか?
おすすめしません。ヘルメットと頭のあいだにすきまができ、衝撃の伝わり方が変わってしまいます。また、走行中にずれる原因にもなります。日差しが気になる場合は、バイザー(つば)付きのヘルメットを選ぶか、薄手のインナーキャップを使ってください。
Q. お下がりや中古品を使ってもいいですか?
推奨できません。理由は2つあります。第一に、そのヘルメットが過去に強い衝撃を受けているかどうか、見た目では判断できないこと。第二に、製造からの経過年数がわからないことです。ヘルメットは、新品で買うことをおすすめします。
Q. 保護者の自転車の幼児用座席に乗せるときも必要ですか?
必要です。むしろ座席に乗せる場合は、子ども自身が転倒を予測して身構えることができないため、より重要になります。走り出す前に必ずかぶらせてください。
Q. どこで買うのがいいですか?
実店舗があり試着できる自転車店やスポーツ用品店をおすすめします。
サイズが合っているかを店員に見てもらえますし、かぶり方の指導も受けられます。子ども用ヘルメットは実際にかぶってみないと判断できない部分が大きいため、最初の1つはぜひ店頭で選んでください。
まとめ —— 選ぶときの優先順位は「基準 → サイズ → デザイン」
最後に、この記事の要点を整理します。
- 安全基準マークを必ず確認する。SGマーク、またはCEの「EN1078」。CEでも「EN812」は自転車用ではありません。
- 頭囲を測り、必ず試着する。大きめを買って長く使うのは、ヘルメットでは危険です。
- かぶり方は「まゆ毛の上・指1〜2本」「あごひもは指1本」。後ろにずらしてかぶらせないこと。
- 嫌がるときは、まず本人に選ばせる。そして大人も一緒にかぶる。叱って解決しようとしない。
- 強い衝撃を受けたら、見た目が無事でも交換する。経年劣化の目安は3年です。
選ぶときの優先順位は、安全基準 → サイズ → デザインの順です。
ただし、実際にかぶり続けてもらうためには、デザインを子ども自身が気に入っていることも欠かせません。基準とサイズで候補を絞ったうえで、最後の1つは本人に選ばせる——これがいちばんうまくいく方法です。
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渡邊 稜平(Watanabe Ryohei)
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